幸せの国ブータンの大臣は働き過ぎか


今日は私が所属する省のサッカーチームの、週末恒例、練習試合でした。

このチームがすごいのは、大臣がストライカーをつとめていること。

ちなみに大臣、46歳。

他のメンバーはだいたい30歳。



最初それを聞いたとき、

大臣が年よりの冷や水的に、しかもえらいのに参加して、みんなが気を遣い、

「さ、大臣どうぞ!」とパスをし、大臣がころころとシュートし、

ゴールキーパーがわざとそれを取りこぼし、

みんなで「よ、大臣!」とかいう接待サッカー的なものを想像していたのですが。。。






全然違いました。





大臣、だれよりも走ります。


試合終盤になっても、標高2500メートルのフィールドで誰よりも走る走る。


ボールとりに体ぶつけてく。


ゴール決める決める。



すっごいです。



ちなみに、下の写真で、空を大きく飛ぶボールを追いかけて走る一向。

一番先頭(一番右)を思いっきり走っている、水色のユニフォーム(アルゼンチンのユニフォーム)を着ているのが、


大臣です。




これ、試合の終盤。でも誰よりも走る大臣。


かっこいいです。(ちょっと、心臓発作で倒れたりしないか、はらはらもしますが・・・)



またこのチームはとってもフラット。

大臣もいれば、彼の専属ドライバーもプレーしてます。

大臣級の偉い人のことを、ブータンでは「ダショー」という称号で呼ぶのですが、

今日もピッチで「ヘイヘイ、ダショー! パスパス!」と彼のドライバーが叫んでいました。



素敵なチームだ。




さて、結局今日は3対1で勝ち(うち1点が大臣)、大臣ご機嫌。

「今日は勝ったから、みんなにお茶おごってやるぜー!」という掛け声のもと、ワイワイみんなで近くのカフェに行きました。

「やっぱりこうやってみんなでサッカーするの気持ちいよね〜」とお茶しながらウキウキ話す大臣に、

一人の同僚(彼も同じ省の役人)が眉毛を八の字にして言いました。彼の名はワンゲイ。

以下、ワンゲイと大臣の会話です。

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ワンゲイ 「でも大臣、ちょっと働き過ぎじゃないかって、みんな言ってますよ」



大臣 「え、本当? みんなってだれ?」



ワンゲイ 「みんなですよ。昨日もタンディンとナムゲイと昼飯食いながら、その話になったんですよ。GNH(国民総幸福量) Commissionの大臣なのに、本人が働き過ぎだよな、って」



大臣 「そんなことないよ。毎週こうやってサッカーしてるし」



ワンゲイ 「いや、家族との時間が足りないってことですよ。いつも帰るの遅いし」



大臣 「うーん、、、それはそうかもな。でも、今はそういう時期だと思ってる。仕事から学ぶこともとても多い。いまは人生の中でも、働きどきの時期かなと位置付けてる」



ワンゲイ 「大臣がそういうのならいいですけどね・・・でもみんな心配してますよ」



 「大臣、いつもどれぐらい働いてるんですか?」



大臣 「いや、日本人から見たらたいしたことないよ〜、全然たいしたことない」(照れる大臣)


 「参考までに! だいたい、何時から何時ぐらいまで働いてるのですか?」



大臣 「う〜ん、9時から、19時半ぐらい。でも今は冬場だから、18時ぐらいかな(照)。 日本人的には、どう?」



 「・・・。 全然ありだと思います」

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ブータンの公務員の勤務時間は9時から17時。11月から2月は、冬季スケジュールになり、勤務時間は9時から16時になります。

これはついこの間まで電気がない地域も多く街頭もなくて夜道が危なかったこと、日が暮れるととても冷え込むため、なるべくみんなを早く家に帰すことが目的だったとか。


そういうルールのブータンの公務員からすると、大臣は「働き過ぎ」なのでしょう。

日本では小学生だって冬学校の終わった後21時まで塾に行ったりしますけどね・・・。



でも私が驚くのは、大臣があの量の仕事を、そんなに短い仕事時間でこなしているということ。

この大臣は、グローバルな視野と、自国への深い理解を兼ね備えていて、

かつ、ものごとを実践的に考えて推し進めていける、ちょっとすごい大臣です。

46歳の若さで大臣になったので、最初は大丈夫か…という声もあったものの、すぐに

「彼でなくちゃ」と言われる人になりました。



同じ省の役人からは「ワーカホリックだ」「もっと家族の時間を大切に」とか言われている大臣ですが、

これだけの仕事をしながら、19時半には仕事を終え家族と過ごし、週末には同僚とサッカーをするぐらい、ワークライフバランスがとれている、

そしてそれを可能にするだけ、圧倒的に高い生産性を保てている、

すごいことですし、ぜひ学びたいなぁと、ワーカホリックな日本人としては(笑)心ひそかに思っています。


そんなブータンへの行き方はこちら