ブータンでひとりクリスマスモードにしてみたけれど
ブータンはチベット仏教を深く信仰している国です。
生活に根付いている。
昨日ご紹介したダライ・ラマの言葉なども、日常において特別なものではなく、
みんなの生活に染みわたっています。
参考:「今日のダライラマ」
先日車に乗っていてラジオをつけると、
「ダライ・ラマの教えにもあるように、〜だよね!」と、若者DJが気軽にダライ・ラマに言及しており、
あぁブータンらしいなぁ、と思いました。
私の仲良し同僚も、デスクにペタッとダライ・ラマの写真を貼っています。
参考:「同僚のデスク」
さて、そんな国なので、ブータンでは12月も20日になったというのに、
クリスマスの影なんてみじんもありません。
町を歩いても、
クリスマスソングもなく、
イルミネーションもなく、
にっこり笑うサンタのおじさんの顔もありません。
浮ついた空気、あおるような空気は一切なく、
今日もブータンには、
静かな、冬の町があるだけです。
こんなに静かな、クリスマス前の町は初めてかもしれない。
落ち葉が散り、風が冷たくなり、
「寒いねぇ」「急に冷え込んだよねぇ」
などと言いながら、みんな背を丸め、そそくさと家に帰ります。
静かな冬です。
でも!
やっぱり、日本育ちの私にとってはクリスマスはクリスマスです。
なんかあまりにもクリスマスがないと、
一度明るく晴れがましくワクワクする気持ちになるものがないと、
年を越せる気もしないというもんです。
ということで、今日はひとりクリスマス気分になるために、
クリスマスっぽいキラ(ブータンの女性用民族衣装、仕事のときは要着用)で仕事に行くことにしました。
今日のキラは、これ。
写真だと色がわかりにくいのですが、これ、恥ずかしくなるぐらいの、コテコテのクリスマスカラーです。
テェゴと呼ばれるジャケットは、深緑色のベルベッド地のものです。
それに、濃い赤のウォンジュ(ジャケットの内側に着るもの、エリ・袖からのぞく)と、
ブータンの伝統的な風合いの、深い緑と赤を基調にしたボーダーのキラ(スカート)です。
そして胸には、金色の王様バッジ。
この王様バッジは、現国王の戴冠記念のもので、毎日つけてるのですが、
なんか今日のキラの組み合わせにつけると特にリスマスっぽい気がする!!
ひとりテンションが上がります。
日本だと、あまりに露骨過ぎて、
12月20日に私服でこんなクリスマスカラーの服を着て町に出ることは、
きっとためらってしまうと思うのですが、
あまりにクリスマスのかけらもないブータンにいて少しクリスマスシックだった私は、
キラでこんなにクリスマスっぽい雰囲気を出せたことに大満足。
もう朝からすっかりクリスマス気分になり、
意気揚々とこれを着て職場に出かけました。
ひょっとして、ひょっとしたら、このクリスマスのかけらもない職場でも、
「あ、今日のキラ、クリスマスカラーだね」
「そうか、もうすぐクリスマスか」
なんて会話があることを、心のどこかで期待しながら。
職場に着くと、何人かが声をかけてくれました。
「あ、新しいキラ?」
でもそれ以上の感想を持つ人はいませんでした。
笑って席に着き、仕事をしながら、
静かに、ひそやかに、
クリスマスの話題を待つ私。
部屋の一角で、全身からひとりクリスマスオーラを出しながら。
しかし待つこと丸一日。
クリスマスの話題は出てきませんでした。
あきらめかけた、夕方。
チャンス到来!
今日は欧米のコンタクト先に連絡とっても、不在の自動返信が返ってきちゃうね〜
みんないないね〜
なんでだろうね〜
という話題。
なぜなら、
それは、
クリスマス休暇だから!!!!
すると、ひとりの同僚が思いついたように言いました。
「あぁ、だってそれはあれだよ」
そうです、あれです、クリスマスです。
「もうすぐ、あれだからだよ。
えーっと、えーっと、えーっと、
欧米でお祝いする、
あの・・・・12月25日のやつ!」
・・・・・・。
それは、クリスマス。
ふと、異国の地にいるということ、チベット仏教の国にいるということを、
痛感しました。
クリスマスの名前も出てこないのでは、
私がいくら緑と赤の服を着てたって、そりゃだれも、
「お、クリスマスカラーだね!」
なんてピンとくるわけはないってものです。
日本人は、けっこう節操なく
楽しいイベントはどの宗教・どの文化のものもはしゃいでお祝いしてしまう気がしますが、
ブータンの人は、本当にしっかり、ブータンの文化とチベット仏教に沿って、
一年を生きているのですね。
ブータンの暦では、1月1日も元旦ではないので、
いまは何も浮足立ったものはなく、
ただ静かな冬を迎えています。
落ち葉がちり、霜がおり、
寒いねぇと言い合い、
犬も人間も背中を丸めてそそくさと道を歩いていきます。
そんな、静かなブータンの冬をしっとり楽しみながら。
でも今週はあと何回かこっそりと、クリスマス・キラを着よう、
とひそかに思った12月20日でした。