民族衣装キラの布を買いに行く、の巻
ブータンでは、仕事などオフィシャルな場では民族衣装の着用が義務付けられています。
男性用はゴと呼ばれる、ひざ丈の着物のようなもので、
女性用はキラと呼ばれるロングスカートとジャケットみたいなものです。
公務員の私も、日ごろは民族衣装のキラを着て仕事をしています。
女性用の民族衣装をまとめてキラと呼んでしまうのですが、
実際は民族衣装は3つのパートでできています。
- スカート部分 : キラ
- ジャケットの上着部分 : テェゴ
- ジャケットの肌着部分 : ウォンジュ
ただ、主役はスカート部分のキラなので、女性の民族衣装を呼ぶ時に、キラとテェゴとウォンジュ、と呼んだりしないで、まとめて「キラ」と呼びます。
ぜんぶ着ると、キラはロングスカートのような感じで、その上にテェゴとウォンジュを羽織る形になります。
テェゴの色が上着の色となり、首まわりと袖に、ウォンジュの色がのぞきます。
またキラ・テェゴ・ウォンジュは、洋服のようにいろいろなデザインの出来合いのものが売っているわけではなく、
基本的に布屋で布を買い、仕立て屋に行って仕立ててもらうのが主流です。
以前、仕立て屋さんでウォンジュを仕立てる様子はご紹介したので、
今日は布選びをご紹介。
まず、キラ・テェゴ・ウォンジュはそれぞれ布の種類が違うので、
バラバラに選び自分で組み合わせます。
で、
この組み合わせ方にひとつ重要なルールがあります。
それは、テェゴ・ウォンジュの色は、キラの布に含まれている色である、ということ。
それができてないといけない、ということではないですが、
これができていないとわかってない人の着かた、になってしまう。
たとえば私がお店であわない色の組み合わせで買おうとすると、
だいたいおじちゃんやおばちゃんが
「それじゃ全然だめよ!わかってないねぇ」とか言って売ってくれなかったりします(笑)
というわけで、テェゴ・ウォンジュの色はキラに含まれている色から選ぶのが鉄則です。
だいたいキラの布というのは、カラフルなボーダー系の柄かチェックで、
テェゴ・ウォンジュというのは、それぞれ単色なので、
カラフルなキラの色から一色ずつ、テェゴとウォンジュに使う色を選ぶイメージ。
このルールが満たされた上で、キラ・テェゴ・ウォンジュが全体としてバランスよくコーディネートされている。
これが単純そうで、なかなか難しい。
たとえばこの手前のベージュのような色のキラ。
ぱっと見、たとえばこのキラと、その奥にあるこげ茶色のテェゴなどあいそうなのですが、
これはアウトです。
ベージュのキラの中に茶色も含まれてるように見えるのですが、
よく見るとその茶色はもっと薄くて、色目が違う。
(布屋のお兄ちゃんも、これはダメだ、と言って売ってくれない)
たとえば、同じこのベージュのキラと、この紫色のテェゴ。
これはキラの中の紫色の刺繍とテェゴの色が同じなのでOKです。
でもこの紫色のテェゴにしてしまうと、今度はウォンジュの合わせ方がむずかしい。
ウォンジュもキラに含まれている色なので、この場合オプションは、
キラと同じベージュか、キラに含まれている深緑か、うすい茶色。
うーん。
正直どれもいまいち。
まずテェゴとウォンジュが両方濃い色だとメリハリがなくてあんまりよくない。
どちらかが濃い色ならもう一色は薄い色の方がかっこいいので、深緑はアウト。
(特に今回はキラの色が薄いので、上のテェゴとウォンジュが両方明るい色だと上が重たすぎてしまう)
そうするとキラと同じベージュか薄い茶色なのですが、
紫のテェゴの生地の色がわりと明るく光沢もあるので、どうも微妙な色目とあわない。。。。
(注:この写真で見ると、青系のわりと落ち着いた紫に見えるのですが、実際はもっとピンクの入った派手な色の紫でした。この写真で見ると、茶色とあわせても悪くないですね、、、)
うーん。
と、店中のテェゴとウォンジュの生地を引っ張り出して、
お店のおじさん・おにいちゃんと一緒にうーんとひととおり悩んだ挙句、
今回はこのベージュのキラには、深緑色のベルベッドみたいな生地のテェゴ、
そしてキラと同じベージュのウォンジュをあわせることにしました。
むー。パーフェクトではないけれど、そこそこ、でしょうか。
(ちなみに私の一番のお気に入りは、プロファイル写真と同じで、このエントリの最初の方にも写ってる、水色系統のコーディネートです。でもこれは晴れ着なのでふだんは着ません・・・)
とまぁ、ひとつキラのフルセットの色を考えるだけでもなかなか大変なのです。
パズルみたいな要素すらあります。
これに加えて、さらに他のテェゴとのローテーション・・・・とか考え出すと、なかなか難しい。
でも難しいからこそ、楽しいのです:-)
ちなみに、お祭りのときなどはみんな晴れ着を着てくるので、さすがにだれをみてもバシっと決まっているのですが、
普段着を見ると、私のような外人の視点からすると、
「え、たしかにそれ、キラの中には含まれてるけどさぁ・・・・そう、あわせちゃうんだ・・・・」
みたいななんともちょっと微妙な取り合わせで着ている人もよく見ます。
全体としてバランスがとれているか、色があっているか、かっこいいか、よりも、
例の、「キラに色が含まれてるルール」の方が優先されてしまって、
いい組み合わせがないときは、トータルでださくてもいいからルール尊守!という勢いの印象を受けます・・・笑
ブータンにいらっしゃって、なんとも微妙な色の取り合わせのキラを着ている女性を見かけたら、
その布の色目をよく見てみてください。
きっと、全体としては微妙でも、ちゃんとテェゴとウォンジュの色はキラに含まれている色であると思います・・・笑